皮膚の優しさ

皮膚感覚とは不思議なものだ。人が、人に触りたいと思うのは、乳児に戻りたい欲求がどこかにあるからなのだろうか?
その点から言えば、セックスという行為は赤ちゃん返りのようなものだ。特に男は胎児にまで戻りたいのではないだろうか?自分がもともと産まれてきた場所に帰りたい、入りたい。
人に触るっていうのは非常に心地よい。しかし、大人になるにつれて、人を触る事にたいして躊躇してしまう。それはどこかで、受け入れられないのが恐い。という思いがあるからだ。だから、大人はセックスをするんだろう。
子供は、無意識のうちにも沢山触られ、そして触る。
なんとなく、性欲というのは、触るという事が柱になっているのではないだろうか?射精やオルガズムに達することが真の目的ではないのではないだろうか?
これは私が、女だからそう感じているだけなのかもしれない。
ただ、相手を、触り触られるという行為は、自分自身を感じる一つの手段だと思う。相手を認識すれば、自分というものがより明確になる。
だから、セックスなんてものは、相手と一つになる事なんかじゃ無いのだ。相手を認識したつもりで、自分の存在を確かめているのだ。
以前、私は少しの間ある幼稚園にボランティアとして、子供たちの食事やトイレのお手伝いをしていた。そこで、G君という男の子をよくお手伝いさせてもらっていた。彼は足が不自由で言葉も話せなかったが、そばによると、おぼつかない足取りで、寄ってきてギューっと私の腕を抱きしめるのだ。そして、私が抱きしめ返すと、彼は心地よく鼻を鳴らして胸に顔をうずめてくる。
私が、G君を抱きしめるとき、必ず涙が出そうになった。彼のお日様の様な髪の匂いや、細いけれどしっかりと温かい体。それらが、「私」という存在を決して否定しないのだ。G君を抱きしめると特別な安心感があった。
例えば、人は不安になった時、無意識に腕をくむが、あれは何かに触りたいという欲求からくる行動だそうだ。
だから、私は子供が出来たら沢山抱きしめようと考えている。
沢山抱きしめて、人間は本来こんなにも温かくて優しいんだよ、と言ってあげたい。

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