ジャンケン 

 大人になってから、私はジャンケンをしなくなった。目の前に並ぶショートケーキにも、鬼ごっこの鬼にも、私たちはジャンケン無しで、うまく全てを丸める事が出来るからだ。
 そして、それは最初から私たち大人には、順番や勝ち負けという、観念が他者との間であらかじめ決定されているからなのだろうか。そもそも、ジャンケンに潜む勝敗の意味は、非常に明快である。そこには一切の理屈が無い。
 大人になって覚えた、譲るという姿勢や、ワザと自分が負けるという作戦。時にそれは大人を賞賛する糧ともなりえたそれらを、私はここでやめにしたい。いつだって、私は誰にだって、負けたり勝ったりできる人間でありたいのだ。
 ところで、ドラえもんって、グーしか出せないんだっけ?

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