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最終章

その風景は、クリーム色の光で、空間が膨張していた。人間は私しか居なかった。どこからか、犬の鳴き声が響き渡る。辺りは、静寂と雑音の狭間に揺れている。ピンと糸を張ったような一本の黒い空が、光の重みに耐え切れずじわじわと下がってくる。私は立ち尽くしながら、犬の鳴き声が、私の悲鳴に変わるその時を待っていた。
一本の空が重力に負ける様子を、はっきりと見届けたい。見届けながら、私は何かに押し潰されたい。
しかし、その期待も空しく、私の体が空を突きぬけ、目の前に広がるのは、ただひたすらに、真っ白い闇だった。
足にまとわりつく黒いひもが、もう、何処にも行くな、と言った。
何処にも?
そうだ、何処にも、行くな。

ええ、行けるはずが無いわ。空間は私の足元にしか存在しないのだから。
後は、全て真っ白い荒野。何処に行けるというのか?まぶしくて、目がくらんでしまった。進めない。
どうしたら、いいのか。それくらいは分かっている。私は体を溶かし、その、訳の分からぬクリーム色の液体に溶け込むのだ。
ゆっくり、ゆっくり黒い糸の下に沈んでゆく私の耳に、もう悲しい、犬の鳴き声は聞こえない。

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